建設業の経営者の方へ

建設業の経営者の方へ

1.個人事業主として起業(主に15-20歳)

 建設業の方の多くが個人事業主として起業して、その後、下請先を雇用する方向で組織化することが一般的です。
10代から実務に携わっている方は、人脈が広く、さまざまな年代の方と触れあうことが多いと思われます。
一般的に、仕事を直取りし、見積書を作成しなければならなくなると、パソコン作業を覚える方が多いと思います。

POINT

・一般消費者に対しても見積書を作成できるようになること(直取りのため)
・下請け、孫請けと直接取引した場合での利益率はどのくらい違うか調べること
・下請けを含めた人員確保ができるかが問題となるため、横のつながりを大切にすること

2.法人成り(20歳~50代)

建設業の方は結婚される時期が早い方も多いように思われます。
 子供が生まれ、社会的な地位・信用を築きたいと考える方などが会社にして、社会的な地位を勝ち取る手段として法人成りを考えます。
 また社会保険料の負担を覚悟しきれない場合には、法人成りをしても効果は薄くなります。社会保険料を含めた原価から利益をどのぐらい得なければならないのかという感覚が身につかず、結局は後悔するケースが多いように思います。
 個人と会社のお金の区別ができない経営者は、一人会社からの脱却が難しくなります。法律上は、それぞれが別人格のため、それぞれの財産であることを認識できるという問題が生じます。この問題は、特に融資の際に、所有と経営が分離されていないと不利にはたらくことがあるため、時期を見て、完全に分離させることが望ましいです。

POINT

〇後悔するケース
・社会保険料の負担を覚悟しきれない方
・単なる節税のために法人成りを考える方
・消費税の免税期間目的のための法人成り
・長期的な経営計画を考えていない方
・お金まわりのことを他人任せにしている方、あるいは協力してくれる人が居ない方(総務の役割を担ってくれる方が居ない場合)
〇後悔しないケース
・ブランディングを考えている方
・離職率が低い場合
・融資などを考えている場合
・3年以内に経理の内製化ができる場合(そもそも節税が困難になることが予定されるため)

3.取引規模の拡大

個人事業主・会社として、信用を勝ち取るようになってくると。
1件の請負代金が500万円以上の工事の依頼(請負施工)を受けることがある。
この場合には建設業の許認可が必要となります。

4.財務的基礎・金銭的信用がもとめられる

一般的に、金銭的信用をもって応えることが多いように思われます。
500万円以上の申請者名義の金融機関の預金残高証明書などをもって証明することとなります。
例えば15歳で個人事業主として起業し、25歳で建設業許可を取得することを考えた場合には、単純に年間50万円ずつ貯蓄することを目標にすることもよいと思います。仮に実現できなくとも、ある程度の自己資金があれば金融機関の融資によって預金残高を補填して、財務的基礎・金銭的信用にこたえればよいのです。

POINT

・メインバンクに経営戦略を理解してもらい、きちんと実行している姿をみせる。

5.許可業種を選ぶ

許可業種を容易に変更したり、増やしたりすることができません。
建設業の経営戦略において重要となるのは、許可業種の選択をどの業種にするかです。

POINT

・まわりの先輩経営者に話を聞いてもらう。
・年商1億円以上ある建設業関連の経営者に聞いてもらうとよい。
・許認可の取得のメリットとデメリットをしっかり把握する。

6.専任技術者になる方法を考える

営業所ごとに専任技術者が必要となり、一般的には本人が専任技術者になることが多いといえます。
専任技術者になるためには、一般的に建設業に係る建設工事に関し10年以上の実務経験がもとめられます。つまり、10年計画になるということです。しかしながら、職業能力開発促進法による技能検定などを利用した場合には、その期間が短縮されることとなります。
建設業許可がどのタイミングで必要となるのかを冷静に予測し、技能検定などを活用して、必要な時期に許可が取られるように準備しなければなりません。

POINT

経営者が専任技術者となることが多いが、専任技術者をどのように確保するか、いつ確保しなければならないのかを、確認すること。

建設業法7条2号

二 その営業所ごとに、次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。
イ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)による高等学校(旧中等学校令(昭和十八年勅令第三十六号)による実業学校を含む。以下同じ。)若しくは中等教育学校を卒業した後五年以上又は同法による大学(旧大学令(大正七年勅令第三百八十八号)による大学を含む。以下同じ。)若しくは高等専門学校(旧専門学校令(明治三十六年勅令第六十一号)による専門学校を含む。以下同じ。)を卒業した(同法による専門職大学の前期課程を修了した場合を含む。)後三年以上実務の経験を有する者で在学中に国土交通省令で定める学科を修めたもの
ロ 許可を受けようとする建設業に係る建設工事に関し十年以上実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の知識及び技術又は技能を有するものと認定した者

建設業法15条2号

二 その営業所ごとに次のいずれかに該当する者で専任のものを置く者であること。ただし、施工技術(設計図書に従つて建設工事を適正に実施するために必要な専門の知識及びその応用能力をいう。以下同じ。)の総合性、施工技術の普及状況その他の事情を考慮して政令で定める建設業(以下「指定建設業」という。)の許可を受けようとする者にあつては、その営業所ごとに置くべき専任の者は、イに該当する者又はハの規定により国土交通大臣がイに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者でなければならない。
イ 第二十七条第一項の規定による技術検定その他の法令の規定による試験で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものに合格した者又は他の法令の規定による免許で許可を受けようとする建設業の種類に応じ国土交通大臣が定めるものを受けた者
ロ 第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者のうち、許可を受けようとする建設業に係る建設工事で、発注者から直接請け負い、その請負代金の額が政令で定める金額以上であるものに関し二年以上指導監督的な実務の経験を有する者
ハ 国土交通大臣がイ又はロに掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者

7.許認可を取得する

許認可を取得するためには、たくさんの書類が必要となります。
税理士は行政書士に登録することができるため、行政書士に登録し、許認可の代理を受忍することができます。
しかしながら、税理士は顧問先の機密情報を多く知っており、許認可を取得するのに不利な情報を得ていることも考えられます。税理士は税務申告書を作成するために預貯金の動き、経理の状況、経営者の近況などを知っており、許認可の代理に不適当な場合も多々あると思います。
したがって、行政書士兼税理士に依頼するのでは無く、建設業許可に強い行政書士に依頼できるかが重要です。また、許認可の申請にはさまざまな書類が必要となります。許認可を目標にするためには、必要書類を揃えることがゴールとなります。ゴールを知らずに闇雲に経営を行っても、宝探しゲームをしているようなものになりかねません。早めに建設業許可に強い行政書士を探し、自分のゴールはどこにあるのか確認しましょう。

POINT

・許認可に必要な書類が何か確認し、日々準備を怠らないこと

8.建設業許可を得た場合

社会的な信用を得て、500万円以上の工事の依頼を受けられることとなります。
ここからがスタートです。信頼を維持することができるかできないかによって、工事が受注できるかできないかが、問われてきます。

POINT

・納税計画がしっかりできているか。
・メインバンクとの連携が図れているか。
・取引規模が大きくなり気持ちが大きくなっていないか。
・やりきった症候群のような状況になっていないか。

【注意】建設業許可を得ないで500万円以上の工事の依頼を受けた場合
 建設業法違反として罰せられます。
 例えば、一つの受注工事を二つ以上の見積書に分解して、あたかも500万円以上の工事の依頼でないかのようにするケースがありますが、こちらは税法と同様に通用しません。建設業法施行令1条の2第2号に規定されています。
 余裕がない経営者がこのような判断をすることが多いように思われます。仮に認められたら、どのような状況になるのか冷静に考えてみましょう。

建設業法施行令1条の2第2号

前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。

POINT

・容易に取得できない許認可のため脱法的な方法は閉ざされていると考えた方がよい。
・建設業は長期計画ができないと、安定的な経営をすることが難しいと考えた方がよい。
・許認可を苦労して取得した経営者が守られないとすれば、そもそも建設業界そのものの基盤が危うくなるため、脱法的な方法を考えても保護されることは難しいといえる。

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