―寄附金と広告宣伝費等の判断基準―
経営実務研究第20号、115-130頁。
研究の目的と背景
職業野球団に対して支出した広告宣伝費等について、寄附金あるいは交際費等に該当するかが問題となる。
職業野球団の広告宣伝費は、広告宣伝費に関する支出した金銭とその効用である「不特定多数の者に対する宣伝的効果」が、個別的・直接的な対応関係に限られず、間接的な関係をも包含して判断されているように思われる。また、法令解釈通達は、あえて「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱」をとりあげている。
租税実務において、広告宣伝費と寄附金あるいは交際費等の判断において、支出した金銭の効用が、すなわち対価性の有無について、間接的な相当因果関係が認められるのかについて、検討を行った。
昭和29年8月10日付直法1-147「職業野球団に対して支出した広告宣伝費等の取扱について」(以下「職業野球団通達」とする。)の個別通達についてとりあげて、検討を行った。
「職業野球団通達」の概要
広告宣伝費の認定: 親会社が球団に支出した金銭のうち、広告宣伝費の性質を持つものは損金算入できる。
欠損金の補填: 球団の欠損金を補填するために支出した金銭も、原則として「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱い、損金算入を認める。
法的・理論的検討
法人税法および関連通達との整合性を以下の通り分析しています。
- 交際費等との区分:
- 交際費は「特定の事業関係者との親密化」を目的としますが、球団への支出は「不特定多数への宣伝効果」を意図しているため、交際費には該当しません 。
- 寄附金との区分:
- 寄附金は「対価性を伴わない支出(非対価説)」とされます 。
- 球団への支出は、間接的であっても「宣伝効果」という対価(効用)を期待するものであるため、寄附金には該当しません 。
- 欠損金補填の正当性:
- 通常、子会社への損失補填は寄附金となる可能性があります。しかし、球団を維持・継続させることが親会社の広告宣伝媒体としての価値維持に必要であり、撤退による親会社の損失(信用毀損等)を回避するためのものと解釈すれば、経済合理性があり広告宣伝費として許容されます 。
結論
通達の意義:
- 「職業野球団通達」は、球団への支出が直接的な対価(役務提供)だけでなく、間接的な宣伝効果も包含して広告宣伝費と認めることを明示しています 。
- 税務職員や納税者による解釈の不統一を防ぎ、課税の公平と予測可能性を確保する役割を果たしています 。
税務会計学的な懸念:
- 行政処分において「間接的効用」を含めた判断を行うことには慎重であるべきとしています 。
- 本来、費用収益対応は個別的・直接的であるべき(具体的会計処理に現れるべき)であり、間接的・期間的な対応関係までなし崩し的に認めることは、租税法律主義の観点からは狭義に解釈すべきであると結論付けています 。

