経営実務研究15号、33-56頁、日本経営実務研究学会

 建設業の請負工事等において、元請業者が下請業者の事故等に係る損害賠償金を支払う場合に、同時に元請業者が下請業者に損害賠償請求権が生ずることが考えられる。このような場合に、通常の請負工事契約あるいは売買契約と同様に、権利確定主義に基づいて、権利が確定した場合には、元請業者が益金を認識しなければならないのかが問題となる。また、下請業者が元請業者に対して、損害賠償に係る債務が確定した場合に、損金を認識することができるのかが問題となる。

 本論においては、権利確定主義に基づいた考え方の場合に、損害賠償請求権は実際に支払を受けた時点で、権利の確定(「損益異時両建説」あるいは「損益個別確定説」)があったと考えることが妥当であると結論付けた。