ビジネス・マネジメント研究第15号37-56頁、日本ビジネス・マネジメント学会
本論においては、法人税法における繰延資産について検討をし、現行法令における問題について研究を行った。また、繰延資産については、税務会計学および租税法学の領域における先行研究が少ないことがあげられる。
会計学においては、資産・負債アプローチおよび収益・費用アプローチなどがあげられ、財務諸表に表現される資産・負債が着目されている。このような背景から、擬制資産である繰延資産については、その計上は狭義となりつつあるといえる。
税務会計学においては、繰延資産の定義が不明確であり、その範囲は、租税解釈によって異なるに至るが、会計学に比して広義であるといえる。また、費用を資産計上することは、損金の繰延となるから、法人税の課税が前倒しとなり、租税債務が過大となると考えられる。納税者の租税債務を過大としたいと考えた場合に、繰延資産の定義・範囲については、不確定概念あるいは不明確な規定を利用して広義とされるおそれがある。
本論は繰延資産の定義・範囲および償却期間をより明確にすべきと結論付け、租税法の税制改正により、課税の公平を図るべきであると結論付けた。