経営会計研究 22巻1号、 59-76頁
建設業においてはジョイント・ベンチャー(以下「JV」とする。)契約を用いて、公共事業の受注を受ける場合が考えられる。このような背景として、地域の建設業に関する法人が減少し、相当の規模の事業を受けるには、信用力などが乏しいことがあげられる。このような場合に、地域維持型建設共同企業体を用いて、公共事業等を受注する場合がある。地域維持型建設共同企業体の趣旨として、「建設投資の大幅な減少等に伴い、地域の建設企業の減少、小規模化が進み、 社会資本等の維持管理や除雪など地域における低限の維持管理までもが困難となる地域が生じかねない状況にある。この通知は、このような地域において、地域の複数の建設企業の共同を促すことにより、施工の効率化と必要な施工体制の安定的な確保を図り、地域の維持管理が持続的に行われるよう、地域維持事業の実施を目的」[1]とすることがあげられており、JV契約により地域社会の維持などが期待されている。建設業法においては、建設業許可に関しては、相当の規制を設けて、JV契約を認めるに至っている。
JV契約とは、本来、建設業特有のJV契約に限らず、合弁契約なども含まれており、広義な定義が用いられていることがあげられる。このため、本論においては、広義のJV契約に基づいて交際費課税制度を論ずることとした。また、広義のJV契約においては、単なる業務提携にすぎない契約もあり、具体的な項目がないJV契約も存在している。JV契約は、建設業特有のJV契約に比して、第三者が認識困難なものも多く存在することから、法人税法の取り扱いも、JV契約の性質によって異なる場合が考えられる。
JV契約の降り賃については、どのような費目によって取り扱われるかによって、課税所得計算に影響があるといえる。外注費については損金算入限度額が設けられておらず、全額損金経理できることがいえる。他方で、交際費等は損金算入限度額を設けており、損金不算入となる余地がある。このため、納税者たる法人は、外注費として税務会計を行うことが課税所得計算において、有利となる。
したがって、JV契約に関する降り賃が、法人税法における交際費等に該当するのか、外注費に該当するのか、あるいは寄附金に該当するのか検討することにより、JV契約に係る建設業税務会計に寄与することを目的とする。