高崎経済大学論集64巻3号141-162頁、高崎経済大学

 会社法における確定した決算に基づいて、法人税法は課税所得計算を行っており、「会計依存」型の申告納税制度を我が国が採用している現状にある。「会計依存」型の課税所得計算は、簡素な課税所得計算を可能とするため、納税者としては申告書の作成コスト等を抑えることができるなど、経済的な合理性が高い側面もあげられる。

 しかしながら、租税手続法においては、租税実定法とは異なる考え方を採用することが認められることがあげられている。具体的には、第一に「会社法会計」から「税務会計」において、企業会計と税務会計において、会計の目的が異なることから、それぞれの考え方が尊重され別表調整等が行われ、第二に「税務会計(租税実定法)」から「租税徴収事務(租税手続法)」において、それぞれの考え方が尊重されることとなる。したがって、納税者は「会社法会計」「税務会計」「租税徴収」の3つの考え方を網羅的に捉えなければならない場合が生ずることとなり、誤解を招きかねないといえる。

 会社法会計は、「認定賞与」は「役員賞与」に該当するため「費用説」を採用している。

 税務会計は「別段の定め」を設けて、原則として損金算入を認めてない。このため、企業会計と税務会計は異なる取り扱いとなる。

 租税徴収事務においては、認定賞与の経済的事象が「贈与」の性質を有する場合に、役員等に対し第二次納税義務を負わせる。この場合に、「贈与」という性質を捉えることとなるため、当該認定賞与は「職務執行の対価」には当たらないため、企業会計が前提とする役員賞与とは異なる性質のものをあげている。

 したがって、本論は国税徴収法39条の第二次納税義務と認定賞与について取り上げ、認定賞与における第二次納税義務の範囲について論ずることとする。