租税訴訟第17号49-72頁、財経詳報社

 本論においては、令和5年に租税訴訟学会で取り上げられた未実現利益の課税について検討を行うものである。

 未実現利益の課税とは、将来キャシュ・フローへの課税や資金的裏付けのない利益への課税が包含される。未実現利益の課税には、所得税と資産税のいずれにおいても問題としてあげられるが、本論においては所得税を中心にとりあげ、資産税についても検討を行う。

 未実現利益の課税は、税務会計学があげる「資本不課税の原則」によって抑制されるものである。他方で、租税政策によって未実現利益に課税されることがあげられている。未実現利益の課税が、法律に基づいて行われないとすれば、行政権が租税政策によって課税することが可能となり、問題である。また、課税の公平をうたって、未実現利益の課税を明確な法律がなく課税できるとすれば、行政権の裁量によって、国民の財産権を侵害することができ、問題である。

 本論は、未実現利益の課税は、租税政策を具体化した明確な法律に基づいて行うべきであると結論づける。未実現利益の課税が、明確な法律がなく行うことは、国民の財産権を行政権の裁量で侵害することにつながるため問題である。

 したがって、税務会計学でいう課税の公平は、租税政策が包含される見解も見受けられるため、明確な法律の規定によって、課税がなされることのうえに、すなわち、租税法律主義のうえに成り立つものであると結論づけた。