租税訴訟15号123-150頁、財経詳報社
本論においては、法人税法の益金認識基準たる権利確定主義と伝統的な実現主義について論ずるものである。実現主義の変遷にともない、法人税法の益金認識基準たる権利確定主義の役割に影響を与えていると考えられる。
本論は、伝統的な実現主義を中心と論ずるところであるから、日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会(令和3年)「中小企業の会計に関する指針」および中小企業の会計に関する検討会(平成24年)「中小企業の会計に関する基本要領」を取り上げ、これらの企業会計と権利確定主義について論ずる。 したがって、企業会計基準委員会(平成30年)企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を網羅的に取り入れて論ずるところではない。このような対応を図った趣旨は、「平成 31 年(2019 年)の改正時のプレスリリ-スに記載したとおり、企業会計基準第29 号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という)の考え方を中小会計指針に取り入れるかどうかは、収益認識会計基準が上場企業等に適用された後に、その適用状況及び中小企業における収益認識の実態も踏まえ、検討することを考えております。」 とされており、「包括的な会計基準」とされるが、「中小企業の会計に関する指針」は当該基準の考え方を取り入れるかについて、慎重な立場をとっている。このため、企業会計がこのような立場であるため、これらを分けて議論することが望ましいであろう。