月刊税務事例54巻7号33-36頁、財経詳報社
租税訴訟学会の「令和3年度研究・研究大会」において、相続税法における営業権の評価について取り上げられ、【シンポジウム】において山下清兵衛先生の司会のもと、相続税法における評価について議論がなされた。
私が「未実現利益」について質問をさせて頂いたところ、相続税法においては「未実現利益」は問題にならないとの批判を頂いており、私の思う「未実現利益」と批判を頂いた方の「未実現利益」には考え方に相違があるように思われ、税務会計学視点から相続税法における「未実現利益」についてどのように考えるべきか、検討をする。なお、本論は「未実現利益」の代表的な例として将来キャッシュ・フローに基づいて算定される割引現在価値法をとりあげて検討を行う。
本論は財産評価基本通達が「未実現利益」を「実現可能利益」に変換する役割を担っていると結論づける。また、このような役割が期待されるためには、財産評価基本通達に規則性がもとめられるといえる。 したがって、不特定多数の当事者間で(市場を通じて)自由な取引が行われる場合に通常成立する価額として実現可能な場合に限り、財産評価基本通達に基づかず評価することが認められ、不特定多数の当事者間で自由な取引が困難な場合には、原則として財産評価基本通達に従って評価されるべきであると結論づける。