経営会計研究第24巻1号1-16頁、日本経営会計学会

 私が建設業界に係る税務会計に携わることが多く、いくつかの学術論文を出筆するに至っている。権利確定主義あるいは債務確定主義における学術的な研究によれば、損害賠償に係る債権・債務は必ずしもそれらが実現・履行されるとは限らないことがあげられ、課税所得計算における認識・測定をどのように行うか論じられている。交際費等の問題においても、これらの問題は同様に生ずるところである。

 租税実務においては、建設工事等に伴い損害賠償金については、法人の業務に関連した損失で、かつ、その権利侵害に関する損害賠償債務の履行として明確な対応関係がある場合に限り、損金算入が認められ、それ以外については交際費等あるいは寄附金に該当するとする。

 しかしながら、司法裁判所の判断を待たずに、迷惑料等の名目で支払われた損害賠償金については、権利侵害に関する損害賠償債務の履行として明確な対応関係をどのように判断すべきなのであろうか。

 損害賠償金の種類は多義にわたるため、本論においては眺望阻害と景観利益の侵害に係る損害賠償金について論ずることとする。