租税訴訟学第11号448-474頁、財経詳報社
本論は、納税の猶予の適用について利益あるいは損失により一律的な判断基準とすることについて検討を行うこととした。なお、国税不服審判所平成28年1月13日裁決を題材に、納税者の猶予について検討を行う。
本稿は、会計上の数額である売上高および税務会計学に係る利益概念について触れることから、税務会計学の手法を用いて検討を行うこととした。また、近年、国際会計基準の影響により実現概念の変遷により、伝統的な実現概念から、投資のリスクからの解放が定義されるに至った。会計学の収益認識の変遷が利益概念に影響を与え、現在も税務会計学に係る議論が活発に行われている最中であるといえる。
納税者の猶予の規定は、損益計算書の税引前当期純利益又は税引前当期純損失の金額を基に判断することが、平成27年3月2日付徴徴5-10ほか「納税の猶予等の取扱要領の制定について」(以下、同事務運営指針を「猶予取扱要領」とする。)により明示されており、間接的な影響を受けることが考えられる。
このため、税務署長の判断により行われる納税の猶予について利益あるいは損失に基づいて、一律的に判断がなされた場合に問題が生ずるか否かを検討したものである。