租税訴訟18号137-162頁、財経詳報社。

 租税債務は、納税義務の成立があり、その後、納税義務の確定のうえに生ずるものである。納税義務の成立により、抽象的納税義務が生じ、納税義務の確定により、具体的納税義務が生ずる。わが国の国税は、原則として申告納税方式を採用しているため、納税者の納税義務の確定により、税額が確定する。他方で、納税者の納税義務の確定につき非協力的な場合や誤りがある場合があり、租税債務の租税法律関係が問題となる。租税債務の租税法律関係については、、権力関係説あるいは債務関係説があげられる。

 租税法律主義によれば、納税者は法律の根拠なく課税されることはない。租税行政庁は、租税債務の実現のために、課税権を行使することができるが、新たな課税要件の創設の権限を有していない。

 租税実務においては、税法の規定により課税要件が明確でない規定があり、どのように課税要件事実をもって、課税関係が決せられるのかが不明確な場合も少なくない。租税実務は、納税者は不明確な規定であっても、納税義務の確定をしなければならない。同様に、租税行政庁も、税額の適否について判断しなければならない。この場合に、法律の規定が不明確なことから、課税要件事実の確認を円滑に行うことが困難なことがある。

 租税行政庁は、法律の規定に基づいて課税要件事実の確認が困難なことを理由に、納税者に不利益を与えてはならない。また、納税者の不利益につながる行政処分等は、租税行政庁が、あたかも新たな課税要件の創設ができるかのような誤解を招くことから、租税法律主義・租税公平主義に基づき、妥当でない。

 本論においては、納税義務の成立と確定の見地から、課税要件事実の確認とその簡略化される場合について論じ、租税実務における課税要件事実の確認について研究する。