観光まちづくり学会誌第15号49-57頁、観光まちづくり学会

 本稿は,多くの先行研究がある交際費課税制度のうち観光産業に関係が深い項目を取り上げ,交際費課税制度について問題提起を行うことを目的とする.
 そのうえで,多くの先行研究において,交際費課税制度の課税要件が不明確であることを論ずる.また,交際費等は事業遂行上,必要な経費であるから損金算入を広く認めるべきではないかとの批判的な見解もある.交際費等は「必要悪」ではないかとの見解も存在する.
 観光産業においては,取引先である法人が支出する金銭において,交際費等に該当するものが多く存在し,タックス・リスク・マネジメントの際に,課税上,有利となるのか不利になるのかを検討することが一般的である.タックス・リスク・マネジメントの際に,交際費課税制度の課税要件が不明確であるとすれば,納税者は課税の予見可能性が損なわれることとなり,不測の課税を負うことが考えられる.このような不測の課税を負うことは,課税要件明確主義に反することとなり,問題となる.
 本稿においては,租税政策において交際費課税制度の課税要件を明確にするか,あるいは,課税要件を明確にすることが困難である場合には,交際費課税制度を廃止することが妥当であると結論付けた.