経営実務研究16号19-39頁、日本経営実務研究学会

 法人成りの租税実務については、既に別稿 において、納税者あるいは税理士が課税所得計算を行うにあたり、注意すべき事項は既に概ねまとめている。しかしながら、数名の実務家より、法人成りを行うにあたり、個人事業主の期間が短く、金融機関の預金口座開設ができなかった事例は、事業の所得が個人事業主に帰属するのか、法人に帰属するのかという疑問を投げかけられた。

 確かに、法人税基本通達1-2-1においては、設立の日をもって事業年度の開始の日とすることとされており、設立の日をもって事業の所得が法人に帰属するかのようにも思われる。しかしながら、継続的な事業を営むに足りる経営主体に至るまでに相当の時間を要し、当該期間は個人事業主として経済活動を行うこともあり、一律に事業から生ずる所得を法人に帰属させて良いのかという疑問が生じた。

 したがって、租税実務の道標として、本論は法人成りの益金および損金の帰属の問題を論じ、租税実務に資することを目的として論ずるものである。  本論文の研究方法は、税務会計学的アプローチを採用している。伝統的規律論として研究するものであり、税務会計公準および税務会計原則に基づいて研究を行った。