経営会計研究27巻1号45-55頁。
税効果会計は法人税等を費用とし、資本維持概念について検討が行われているようであるが、租税実務では資本維持が図られない課税所得計算を目にすることが多々あり、疑問を抱かずにはいられなかった。
本論は、税効果会計を含む税引後当期純利益が、資本維持概念が問題であるのか、税効果会計を含まない税引前当期純利益までが、資本維持概念の問題であるのかを検討し、税引前当期純利益までが資本維持概念の射程であると結論づけた。
また、資本維持概念に税効果会計を包含する先行研究は、課税所得計算に名目資本維持に基づくものであるとされるが、現行の租税制度は企業利益を別表調整することからも分かるように、損金不算入項目があり、資金的裏付けのある利益が課税所得とされるとは限らない。このため、本論は資金的裏付けのある課税所得とは限らない原因について、租税実務で身近なものをとりあげて検討を行う。
税効果会計に資本維持概念を取り入れるのであれば、名目資本維持が図られる課税所得計算の前提にあるため、租税政策によって資金的裏付けのない利益に課税することについて取り上げ、そのような租税政策を批判したうえで論ずるべきであろう。あたかも、現状の租税制度は、名目資本維持が図られているかのような誤解を招くような研究は避けるべきである。
したがって、税務会計学の見地から税効果会計において資本維持概念を取り上げることの虚構性をあげ、現状の租税制度の問題をとりあげることとする。