臨床医学情報創刊号35-54頁、日本臨床医学情報系連合学会
法人成りした場合の医師会の入会金等に係る繰延資産は、所得税法の規定に基づいて必要経費として認められるかが問題となる。所得税法と法人税法は異なる制度であり、また法人成りによる事業の継続は異なる課税対象によるものとなる。従って、租税実務では、法人成りによる変更を求められる。また、法人成りを行った場合に、個人事業は廃業となるが、所得税法上、繰延資産の未償却残額を必要経費とできるかが問題となる。所得税法においては、法人税法のように直接的に必要経費とすることができないことが問題点として指摘できる。必要経費とする方法として、所得税法は資産損失の規定により繰延資産の未償却残額を必要経費とすることが考えられる。このためには、法人成りによる廃業が、資産損失要件である「取りこわし、除却、滅失その他の事由」に該当し、必要経費と解釈できるかが問題となる。 本論においては、法人成りした場合の医師会の入会金等に係る繰延遺産の未償却残額を、資産損失として必要経費として認めるべきであるかの考察を行う。また、所得税法における繰延資産に関する課題を明確にし、改定のための提言を行う